絨毯の歴史は4000年を遡りますが、近世になると合成染料、機械化により商業化する一方でした。このままでは誇り高き伝統文化の崩壊につながるとの危機感を持ったミーリー工房(テヘラン・1820年創業)の5代目、ラズィ・ミーリー氏は、手紡ぎ草木染手織りといった伝統的手技にこだわり、世界各地に残る古典的絨毯の名品を復元して昔以上のものを作り出しました。
 また、伝統を大切にしながら新感覚のデザインと近代的な品質管理によって芸術性豊かな作品を発表しつづけており、その作品はロンドンのヴィクトリア・アルバート美術館をはじめ、ノルウェー王室などにも納められ、高く評価されております。
 一方、絨毯が一般庶民の手の届かないものであっては、これも文化の崩壊につながるとの思いから、出荷価格は世界中同一に定められています。100年、200年の使用に耐える堅牢さも備え、将来のアンティークと云われておりますが、完成までの手間と、その美しさ、力強さを考えると、とても低価格とおもわれる絨毯です。
 本物の絨毯は実用を兼ねた美術品です。眺めてよし、踏んでよし、また寝ころんでもよし、実に豊かな気分にさせてくれます。
 今回もミーリー工房の絨毯を中心に約90枚を展示いたします。どうぞ直接触れて、皆様ご自身で絨毯の魅力をお確かめ下さい。

2008年10月 画廊主・高橋嬉文